大槻昌子・作品を語る
生命はその温みによって存在を知ることが出来ます。私の作品達も、彼等と向き合う長い月日の間は、この手にはっきりと温もりを感じさせてくれます。
でも、私にとって本当の命が彼等に宿るのは、この手を離れた作品達が、新たにそれを手にする方にその温みを伝える時なのです。
私は自身に問いかけます。作品に命を吹き込むことは出来たのか。彼等は独立した存在として歩いて行けるのかと。
私はもう、それを見守ることしか出来ません。彼等の温みも私の悔恨も、全ては既に遠くへと去ってしまっているのですから。
写真は「昂」。金、銀、銅、そして銀と銅の合金。それぞれに融点の異なる彼等の自己主張に耳を傾け、対話を続ければ、その表情も次第に和らいで来ます。
そこに加わる炎の力と鏨の技。高まる意識の中で、私自身が五つ目の素材となり、ついには、この腕の中で、彼等とひとつになる瞬間。
もうひとつ。病床にあった恩師のこの作品を前にして甦る昔日の眼光。いくつもの記憶がこの作品を特別な存在にしています。
1943年 | 横浜生れ |
1966年 | 多摩美術大学デザイン科卒業 |
山名文夫・黒木絢子・増田三男に師事 | |
1977年 | 大槻工房 設立 |
1982年 | 第22回伝統工芸新作展入選・以後連続入選 |
第12回伝統工芸日本金工展入選・以後連続入選 | |
1984年 | 第31回日本伝統工芸展入選・以後連続入選 |
1987年 | 日本工芸会 正会員認定 |
1992年 | 第32回伝統工芸新作展「奨励賞」受賞 |
第22回伝統工芸日本金工展「朝日新聞社賞」受賞 | |
1995年 | 第31回神奈川県美術展「特別奨励賞」受賞 |
1996年 | 第26回伝統工芸日本金工展「東京都教育委員会賞」受賞 |
1997年 | 第37回伝統工芸新作展「東日本支部賞」受賞 |
1998年 | 第28回伝統工芸日本金工展 鑑審査委員 |
大槻工房 横浜元町へ移転 | |
1999年 | 個展(日本橋三越本店) |
2002年 | 第42回伝統工芸新作展 鑑審査委員 |
2004年 | 現代の「日本の金工」展 招待出品(デンマーク王立工芸博物館) |
2005年 | デンマーク国立技術学校貴金属研究所にて彫金のワークショップ |
2006年 | 第34回伝統工芸日本金工展「日本工芸会賞」受賞 |
2008年 | 個展(日本橋三越本店) |
2009年 | 第49回 東日本伝統工芸展鑑審査委員 |
第38回 伝統工芸日本金工展「文化庁長官賞」受賞 | |
2011年 | 第40回 伝統工芸日本金工展「朝日新聞社賞」受賞 |
第58回 日本伝統工芸展「朝日新聞社賞」受賞 | |
2013年 | 第60回日本伝統工芸展 鑑査委員 |
現在 | 日本工芸会正会員、日本工芸会金工部会幹事 大槻工房 主宰 |